パパイアの種子を刮(こそ)いでいた指を口中に入れ雨を感じる

小林久美子『恋愛譜』(2002年)

 

 

こそぐ、という表現がとてもリアル。
こういうものは、ナイフなんかを使うより、指の方が便利できれいにとれる。
そして、そのねとっとした、少しくさみのある甘さのうつった指を口に入れるのも、子どもっぽいけれど、ごく自然な行為に感じられる。

 

このリアルさ、自然さの上に、最後の「雨」がたちあがる。

 

パパイアが熱帯の雨を思わせる。激しく、そしてさっと晴れてしまう雨。

モームに「雨」という小品があったことを思い出したりする。

 

日常は、たちまちにして広い世界へとつながる。

 

掲出歌のあとには、次のような歌がある。

・はぐれるということを得る荷をすべて下ろしおわった船はひそかに

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