真鍋美恵子『玻璃』(1958年)
かまきりはこれから蜘蛛を食べる。
首尾よくつかまえた獲物に満足して。
「優位なるものの身の美しく」、こう言われてはじめて、かまきりのような小さな虫の姿態にも表情があることを思う。
その体はきれいに伸び、あざやかな緑にみなぎって、繊い手脚を動かすのだろう。
食べる、ということにいっしんに向かって。
だが、この「美しく」には「醜く」がはりついている。
勝つことによって生まれた弛緩が、美を愛でる一方でたっぷりと味わわれようとしている。
この「優位」にある、過剰な自信、単純、油断は見逃されない。
一点の曇りももたないものは危うい。
「優位」であることは、脆く、だから美しい。