白昼に覚めたる眼(まなこ)ひらきつつ舟の骨格を見わたすごとし

横山未来子『花の線画』(2007)

 

 比喩はお互いの距離が遠い方がおもしろい。しかし、読者に分かってもらわねばならない。

 遠く離れているけれど、言葉を超えたところでつながっている必要がある。しかし、理屈になってはいけない。なかなか容易ではない。

 

 さて、この場合はどうだろうか。

 昼間にしばし眠っていたようだ。おそらく家の中だろう。椅子に座っているのかベッドに寝ているのか。「見わたす」という動作の積極性を考えると、椅子でのうたたねのような感じがする。

 「舟の骨格」というものじたい、ふだん目にするものではない。白木のものをイメージさせるのは、初句に「白昼」があるからか。また、「舟」というから、小型の船、つまりちょうど部屋の大きさくらいの舟を指すだろう。

 

 うたたねから覚めてぼんやりと部屋を見回すと、自分が白木の舟の骨組みに包まれているように感じた。それは夢の中の異空間の現実における名残のようなものであるだろう。

 そのあたりの浮遊感が、「眼ひらきつつ」の「つつ」のあたりにあるようだ。

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