生沼義朗『水は襤褸に』(2002)
この歌集が出版されたころにはすでにネット検索があたりまえになっていたのだ。
〈中ピ連〉は、「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合」の略。この団体は、1972年に結成された「戦闘的ウーマンリブ集団」であり、1975年に解散した、とウィキペディアを信じれば、簡単に調べられる。
そういう過去の膨大な活動の記録が知識として蓄積されているのもインターネットの特長である。
なぜ、作者が〈中ピ連〉を検索したのかは不明だが、現代の一コマを調べようとマジメな気持ちで検索をかけたに違いない。
しかし、結果のひとつに含まれていたのが、「中年ピアノ愛好者連盟」であった。(「中年」の団体であれば、「ピル」の方の〈中ピ連〉の存在を知っていても良さそうなものだが。)
マンガ的でドリフ的にずっこけるシーンであるけれど、そこには、しかつめ顔の社会派団体の存在を笑い、無化するような爆発力がある。
まったく何も縁のなかった三者をネットが偶然に結んだ。その具体例をうまくとらえている一首である。