いくつもの昭和が過ぎて夜ふかく東野英治郎の赫きくちびる

前川佐重郎『不連続線』(2007年)

昭和は1926年12月25日から1989年1月7日まで。
冬から冬、年末に始まって年初に幕を閉じた。
年号としては64年まであったが、実際には62年と2週間ほど。
一世一元の制が定められたのは明治からで、大正時代が短かったこともあり、元号としては日本でも世界でも最長である。

いくつもの昭和、とは、さらりとした表現だが感慨深い。
一言で昭和といっても、第二次世界大戦の戦前、戦中、戦後では時代の様相は違う。
戦後にかぎっても、敗戦からの復興期と、60年代の高度経済成長の時期、80年代後半のバブル経済の時期では肌で感じる時代の空気はずいぶん違ったはずだ。

東野英治郎は、テレビ時代劇の初代『水戸黄門』が当たり役だった。
当時、悪役が多かった東野の起用がシリーズ成功の一因だったそうだ。
一首に登場する赫きくちびるの東野英治郎は、いつごろの映像だろう。
もっと若い頃の作品かも知れないが、やはり、かっかっかと笑う『水戸黄門』のような気がする。

最近は古い映像でもデジタルリマスタリングされて、不自然なほど鮮やかな発色で放映されることが多い。
その映像が鮮明であればあるほど、ほんとうに昭和は過ぎ去ったという感じがふかくなる。
昭和とは、フィルムの汚れやキズがそのまま映し出される時代だった。
今日は、昭和の日。
かつての天皇誕生日が、昭和天皇の死去よりみどりの日と改定され、さらに2007年から昭和の日とあらためられた。

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