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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
今井 恵子
吉野にはあの世この世を縫ひあはす針目のやうな蝶の道あり
なかぞらのすきまに見えて赤き實の三つ野鳥ののみどへ行けり
自動エレベーターのボタン押す手がふと迷ふ真実ゆきたき階などあらず
わが脚が一本草むらに千切れてゐるなど嫌だと思ひつつ線路を歩く
すべからく落つるべき子が落ちしかな大田区池上むかしの肥溜め
呼ぶ声の水にひびかひ草むらにもう一人ゐて少年のこゑ
白つつじゆたかに昼の日は射して蝶、蝶を追ひ人、人と行く
そうですか 怒鳴り続ける声があり頷きながら思う白鷺
戦争を知らぬ世代が老いてゆく不安なタンポポ空ばかり見て
寂しさの根源として縁側の日なたに出でて正座する人
老いさびし犬の散歩に小太りの猫の薄目や 法案通る
つけ捨てし野火の烟のあかあかと見えゆく頃ぞ山は悲しき
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