生沼義朗のアーカイブ

花山周子/もう無理!無理無理無理無理テンパってぱってぱってと飛び跳ねており

小池光/さつきまで目の前に居りしが忽然と消えてなくなりし田村善昭(よしてる)

田村よしてる/いのちあるすべてのものを同胞としたり若冲、ダ・ヴィンチもまた

小坂井大輔/食べてから帰れと置き手紙 横に、炒飯、黄金色の炒飯

清水正人/いちめんの嵌め殺しの波しんしんと調理場の窓海に向かへり

柴善之助/ガードマンは天丼に対うすぐ裏の工事現場の土をこぼして

松﨑英司/花豆の蜜煮の艶のうれしくて人肌の鍋は静かにしまふ

金津十四尾/雪ふらぬ大寒にわが手ひび割れず雑誌返品の荷造り捗る

小川太郎/五行削れといわれ結局削りしはやはり個人的思い入れ部分

齋藤芳生/林檎の花透けるひかりにすはだかのこころさらしてみちのくは泣く

淡島うる/ちゃんとした肉をちゃんとした炭で焼きちゃんとした米で食ってから行く

鈴木智子/屋上で白く干されたシーツたち五月はきっと揮発する夏

住谷眞/あまたなる死刑と雨の影のこし平成最後の夏は終はりぬ

山中律雄/父の死を忘れて父を問ふ母にその死告ぐればいたく悲しむ

福島泰樹/前衛は精神なればあえかなる歌の翼を濡らすともよし

村上一郎/わかくさの妻らを送り家を出て冬浅(あさ)き日に死にゆきにけり

青柳守音/降りたった蟹よりあかいヨコハマはかすかに焚火のけむりが匂う

加賀要子/スクリーンを外し観客席を運び去りし劇場空間を人らと清む

穂積昇/岡持につきては消ゆる雪を見て春の気配の近づくを知る

吉田優子/カラメルをとろり煮る午後猫が鳴く昨日はどこにもありませんよう

山川藍/履歴書の写真がどう見ても菩薩いちど手を合わせて封筒へ

齋藤史/携帯電話持たず終らむ死んでからまで便利に呼び出されてたまるか

熊谷純/ほの香るアルコールにて手を浄めストアスタンプの日付を変へる

笹本碧/下り坂下から見れば上り坂インテグラルのかたちをえがく

井野佐登/読みさしの歌集を置きて夜のほどろレセプト点検始めたりけり

佐伯裕子/夜ごとに遊園地にわく錆などの分けの分からぬ悲をやり過ごす

斉藤斎藤/夫と剣と玉とはんこがもうひとつぞろぞろとゆくうしろから妻

篠弘/モンブラン銀のシャープの黒ずみをひと夜すがらに磨き上げたる

中地俊夫/島田修三は島田修二に似る歌を作らざるゆゑ島田修三

古谷智子/夕映えのこゑはしづかに充ちあふれはるかな死者をまた呼びもどす

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