生沼義朗のアーカイブ

佐々木実之/使ひきらざるティッシュを受け取り来し我にかなしみのごとくティッシュは溜まる

紺野裕子/たれかれの消息にはなし及ぶとき放射線量つもるふくしま

井上雅史/七年を経た仙台の地下鉄の通勤客にスニーカー多し

花山周子/三時草の爆ぜたるのちのさびしかる錆色の実を真夏に見おり

花山周子/春風に杉の樹冠は揉み合える戦にも似る交合のさま

鈴木陽美/伸びた分だけしか切らず変わらないわたしが初冬の街に出てゆく

黒﨑聡美/海苔缶にゆび弾ませててきとうなリズムを生めば少しあかるむ

黒﨑聡美/待合室はさいしょに暮れてさかさまに戻されていた雑誌を直す

浜田蝶二郎/かうするつもりだつたが結局かうなつた 長き一生(ひとよ)を要約すれば

池田はるみ/マンションはガーゼ巻かれて建ちをれば風にかすかな窓明りあり

奥村晃作/正確に刻んだ結果十ミリの女人立像ジャコメッティの

奥村晃作/一般に犬はワンワン叫ぶから普通名詞でワンちゃんと呼ぶ

田口綾子/そこに直れ、歌にするから歌になりさうなポーズを今すぐに取れ

田口綾子/ほんたうにアホだしいいやつだと思ふ「寄り寝」一語に大喜びで

宮川大介/#マストドン その末席に君を恋う声ぞこだまのhttps://youtu.be/gsNaR6FRuO0(ピポピーピョロロ)

小高賢/ネクタイをかたく絞めれば目や口が鼻を目指して集う気のする

廣野翔一/生活に仕事がやがて混ざりゆく鉄芯入りの靴で外へと

高島裕/労働は、寒い。つかのま有線の安室をなぞるくちびるを見た

二三川練/文献のコピーを取れば海溝のようにインクの黒くあるノド

糸田ともよ/さみしいひとかげがゆめのしんになりぎんがをだいてかたむいてくる

斉藤斎藤/ラブホテルの角を曲がってT井くんにここのカレーを食べさせたかった

笹井宏之/やむをえず私は春の質問としてみずうみへ素足をひたす

小池光/「皇族食品」といふ会社あり台湾にお菓子の餅をつくり売る会社

重藤洋子/無言になり原爆資料館を出できたる生徒を夏の光に放つ

加賀爪あみ/ペンライトの光の海に飛び込んで私は波の一つのしぶき

平山公一/現在(いま)の世に百グラム四円で買へるものH形鋼、異形棒鋼

中野照子/きみを葬るしろき広場に寒風(かんぷう)吹きさらわれてゆく雪の上の雪

前田透/わが愛するものに語らん樫の木に日が当り視よ、/冬すでに過ぐ

蒔田さくら子/翔ばむといふ夢ならず歩まむ願ひもて歩きゐる夢くりかへし見る

上田三四二/わが佇つは時のきりぎし今生の桜ぞふぶく身をみそぐまで

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