生沼義朗のアーカイブ

槇弥生子/吐きし血の500㏄の行方などふと気になればずつと気になる

森岡貞香/今夜とて神田川渡りて橋の下は流れてをると氣付きて過ぎぬ

鈴木英子/髙瀬さんも眼鏡、市原さんも眼鏡 もういないひとのやさしい眼鏡

髙瀬一誌/体(からだ)がこわれたという こわれたあとのつくり方あり

うにがわえりも/ルマンドの中を覗けばはつなつの海のうねりが目の前にくる

榛葉純/三次元、峠なゆたはまだいない 父娘(おやこ)ふたりでプリンを食らう

市原克敏/わがゆびの影をいぶかる蜘蛛といる蜘蛛に流れる時間の外で

皇后陛下御歌/今しばし生きなむと思ふ寂光に園(その)の薔薇(さうび)のみな美しく

本日の花山周子さんの「日々のクオリア」は夜までにはアップするそうです。

中村亜裕美/速報を読みおえしあと掌にすこし遅れてくる震えあり

黒瀬珂瀾/中澤系の通夜より帰る美南ちやんに布袍の裾を摑ませながら

中澤系/明日また空豆の殻を剥くだろう同じ力をかけた右手で

安井高志/子供たちみんなが大きなチョコレートケーキにされるサトゥルヌス菓子店

山内頌子/猫トイレのシートがにおう もう替える必要のないシートもにおう

御供平佶/線路ゆく人のつらなりガラスなき前窓に見て警笛鳴らす

曽川文昭/夕空を旅客機一機離り行き工学はいま文学を呼ぶ

北川草子/安売りの洋書がパラフィン紙の下で花束みたいな音をたてる

仙波龍英/夕照はしづかに展くこの谷のPARCO三基を墓碑となすまで

藤原龍一郎/散華とはついにかえらぬあの春の岡田有希子のことなのだろう

木俣修/行春(ゆくはる)をかなしみあへず若きらは黒き帽子を空に投げあぐ

馬淵のり子/看護師の手の甲のメモ三桁の数字見ながら血を採られおり

加島清子/巡回のどの病室も月の見ゆ今宵はカーテン閉めずにおかむ

松岡秀明/罫線も活字も美しき赤なるは麻薬を処方するための紙

月丘ナイル/明日の朝飲むはずだった薬たち投薬トレイで雪解けを待つ

島本太香子/息を吸い肺膨らませ吐いて泣くそれが独りで生きる始まり

京表楷/氷詰めの指と指無し患者来て七時間かけ指もとに接ぐ

吉川宏志/桜まだ咲かざる闇に立ちながらアナクレオンの如き死を聞く

佐々木実之/使ひきらざるティッシュを受け取り来し我にかなしみのごとくティッシュは溜まる

紺野裕子/たれかれの消息にはなし及ぶとき放射線量つもるふくしま

井上雅史/七年を経た仙台の地下鉄の通勤客にスニーカー多し

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