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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
カテゴリー:
一首鑑賞
風が苦しみ始めたやうだわたくしの深い疲労に気づいたらしい
〈通草の実知っているひと〉と我が問えば十七人の全校生みな挙手をする
齒の痛みにさらすぶざまはうつしみに恥多くとも生きて在るゆゑ
「ピラカンサ」をどうしても聞き取れぬ父に激しく言う「ピラカンサ」
秋の夜はもの冷えやすし爪切りも鋏もひとをおもふ心も
長雨の明けてとんぼの高く飛ぶいのち余さず秋空をゆけ
捨てられるための資料を作ったら怒鳴られるための電話をかける
変はり得ぬわれを率ゐて十月と九月をつなぐ真夜を渡りつ
話す程に食ひ違ひ行くこの電話早く切らむと受話器持ち換ふ
つぎつぎに「おじやましました」と言ふ声の聞こえて息子もゐなくなりたり
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