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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
カテゴリー:
一首鑑賞
雨に会うそのためだけに作られた傘を広げて君を待ってる
死ぬまでが暇だな 歌をうたひたい花の名前をもつと知りたい
いつせいに風上を向く傘の先雨が歌だと知つてゐるのだ
「ネット銀行レモン支店」にタッチする葉つぱのお金を送る心地に
花束をかかえた君は手を振れずさよならにただうなずいていた
雨のなか来し風が部屋をとほるときかずかぎりなき蝸牛のけはひ
雨垂れの音飲むやうにふたつぶのあぢさゐ色の錠剤を飲む
妹をさがしゆく夕 どの貌も妹に似てあぢさゐなりき
錠剤を押し出す力の弱ければはるかな岸の鹿を恋うなり
死者のもつ愉しみは知るよしもなし野川の底のさかしまの天
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