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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
カテゴリー:
一首鑑賞
口にしないすべてのことを受けとめるようにシチューが並ぶ食卓
おーい列曲がつてゐる、と言ひかけて 眼(まなこ)閉ぢれば春の日はさす
知る人ぞ知る体温として残れかし辞書への赤字を日々に重ねて
残されし私物のゆえによみがえる人の名のありすすむ昼飯
山岸に、昼を 地(ヂ)虫の鳴き満ちて、このしづけさに 身はつかれたり
春の陽に百人午睡する電車ピンキンピンジン海を横切る
泡立てて体擦(す)りつつほとほとに飽けりからだは鍋より大き
面長き享保の女雛のまなじりにやどれり春の破れた力
歪形(わいけい)歯車の かんまんなきざみの意志たちの冷静なかみあいの、──この地球のこのおもいおもい午後
挽歌ふたつときの間に成り成りしことのふいに膝頭さむきわれかも
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