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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
月:
2010年9月
喫茶より夏を見やれば木の札は「準備中」とふ面をむけをり
うつぶせに眠る娘の背に落ちて月のひかりはまだ新しい
父を支へて歩めば老人のにほひせり不機嫌に垂るる時間の匂ひ
ポケットに電球を入れ街にゆく寸分違はぬものを買ふため
夜半すぎてこころのしまりくるときのこの真顔(まがほ)ひとりわれのみぞ知る
名殘(なごり)とはかくのごときか鹽からき魚の眼玉をねぶり居りける
ことばもて君をのぞけば月蝕のにおいのような遠いくらがり
育ちては何の記憶もなからめど時にはわれも押すベビーカー
「はえぬき」の炊きたてを食む単純な喜びはいつも私を救う
平原にぽつんぽつんとあることの泣きたいような男の乳首
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