2019年03月のアーカイブ

加島清子/巡回のどの病室も月の見ゆ今宵はカーテン閉めずにおかむ

熊本吉雄/川沿いの桜並木に居りまして、蕾の色づく楽しみでした。

松岡秀明/罫線も活字も美しき赤なるは麻薬を処方するための紙

熊本吉雄/先日はカレンダーをいただきありがとうございます 掛時計はありませんか

月丘ナイル/明日の朝飲むはずだった薬たち投薬トレイで雪解けを待つ

熊本吉雄/自制とは齢加えて思うなば何と無為なる時の越し方

島本太香子/息を吸い肺膨らませ吐いて泣くそれが独りで生きる始まり

熊本吉雄/なんだかね自分もガレキになっちまった ガレキはガレキを片付けられない

京表楷/氷詰めの指と指無し患者来て七時間かけ指もとに接ぐ

中山くに子/二階よりヘリに拾われ雪の夜の避難飛行すあれから三年

吉川宏志/桜まだ咲かざる闇に立ちながらアナクレオンの如き死を聞く

山内亮/避難所のラジオ体操第一は顔に両腕をこするよう廻す

佐々木実之/使ひきらざるティッシュを受け取り来し我にかなしみのごとくティッシュは溜まる

庄司邦生/濁流に胸まで浸かり年金証書頭に載せてひたすら逃げる

紺野裕子/たれかれの消息にはなし及ぶとき放射線量つもるふくしま

金野友治/田も畑も見渡す限り沼となり遺体浮く見ゆ三月十二日

井上雅史/七年を経た仙台の地下鉄の通勤客にスニーカー多し

林静江/十一日で止まりし日付けと日直を丁寧に消し職を退く

花山周子/三時草の爆ぜたるのちのさびしかる錆色の実を真夏に見おり

真中朋久/子の旋毛のやうだと思ひもう一度細線にかへて台風を描く

花山周子/春風に杉の樹冠は揉み合える戦にも似る交合のさま

真中朋久/山越えの風にふるへる大枝を寒の夜尿(ゆばり)しつつ思ふよ

鈴木陽美/伸びた分だけしか切らず変わらないわたしが初冬の街に出てゆく

式子内親王/時鳥そのかみやまの旅枕ほの語らひし空ぞ忘れぬ

黒﨑聡美/海苔缶にゆび弾ませててきとうなリズムを生めば少しあかるむ

大辻隆弘/箔かろく圧したるごとき雲はゆき風明かりする午後となりたり

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