2020年02月のアーカイブ

藻のなかにひそむゐもりの赤き腹はつか見そめてうつつともなし 

針葉樹は燃えやすい樹といつ誰に教はつたのか、空よ、夕焼け

友人がベジタブラーになったらしいならなくていいと思いました

空席を探すあなたを淡い陽はジョルジュスーラの絵にしてしまう

死ぬもよし死なぬもよろし又ひとつどうでもよしの春は来にけり

何歳になったの? などと子はわれを木の葉木菟コノハヅクのように見つめる

かが鳴きて夕はかへる荒鷲のつばさにしのぐ筑波やま風

咽喉ふかくうるほしうるほし生きてゆく目白も日雀も四十雀はも

星座を結ぶ線みたいだよ 弟の名前を呼んで白髪を抜けり

べつべつに絵を視ることになれてゆく河口のやうな午後のうすら陽

しろくま科プランクトンが溺れててシャンパンに浮く彼らの気泡

鉛筆のごとく心はとがりゆき朝の道路がまっすぐになる

捨てられた都ばかりが大きくて今は胎児に帰るうみへび

紅い薔薇が一本風に飛ばされて陽のなかのフイッツジェラルドの墓

姉さんは今宵帰らず硝子窓力なく鳴る 冬が来ていた

お父さん大嫌いって子に言われしばらく蜜柑がむけなかった

ゆふまぐれ、とふ語の確實性のことなど思ひつつ江ノ電を待つ

みずうみの岸にボートが置かれあり匙のごとくに雪を掬いて

稲妻の刹那きりぎしすみれいろ雨ははげしく斜めなりけり

星が行く道のながてを何となく夫の名前を呼びたくて呼ぶ

水漬ける柱朽ちたる桟橋にいのちいとほし月の漣波

麵麭を買ひ「ma mère est morteママが死んだ」と言ふ我に野の風のごとうなづくダミアン

さらば夏アトランティスを見て来たと誰か電話をかけてこないか

ついさっき裸の馬が駆け抜けたそんな二月の午前五時半

かわやつめはぎにとりつき血を吸うと夢みしゆうべ熱すこしあり

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