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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
月:
2021年5月
カツレツの厚みや苺の個数にも差をつけたがるわが妻の愛
長き廊折れ曲りきてたたずめりわが部屋はしづかな蔵となりゐし
口にすれば消えさうなもの兆し来てしばし緘黙 会話のさなか
ゆきずりの麺麭屋にある夜かいま見し等身のパン焼き竈を怖れき
「お母さん」呼べば「はい」とうこのうつつ昨日も今日もわれの幸福
川魚のむねをひらいてゐるときに夕虹あがる夕虹のうた
母死なせ生きのびしわれ死にしわれ寄り添ひて立つ自販機の前
もう次の芥川賞が来るらしい 夏の帰宅をくりかえしたら
水槽の中を歩いているような日は匿名になり月になる
はやりかぜの熱おちゆきてしづかなる畳のうへにわれはすわりぬ
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