大松 達知


宇宙塵うっすらふりつもるけはいレポート用紙の緑の罫に

                   佐藤弓生『世界が海におおわれるまで』(2001)

 

 難解な歌が多い歌集の中で、これは分かる(と思う)。

 宇宙塵とは、「宇宙空間に存在する微粒子状の物質」(広辞苑)。

 しかし、この場合、そんな科学的な説明を念頭に置きつつ、もっとブンガク的に、宇宙から降ってくる得体のしれないチリ、ととらえておいていいだろう。

 レポート用紙の横罫線を立体的に感じて、そこに雪が降り積もるように、宇宙からの塵が積もるという。

 (イノシシよけの電線が畑の周囲にめぐらされている光景を連想しなくもない。)

 それだけの歌なのだけれど、自分が今座っている部屋と、時空を異にしたとおいとおい宇宙空間が、そのゆがみを飛び越えて交信しているようなスケールの大きさを感じる歌である。

 「宇宙塵」という画数の多い(頭でっかちな)初句が視覚的に重みをもって降りてくる感じ。そして、うっすらふりつ/もるけはい、という平仮名表記の句跨りから、軽く積もって逝く様子が感じられる。「罫」という字にも横棒が多い。

 縦書きであればもっとよくわかるところだ。