竹煮ぐさしらしら白き日をかへす異変といふはかくしづけきか

『橙黄』葛原妙子

 竹煮草は日当たりの良い荒れ地などに繁り、白い細かい花を多数つける。この歌は「停戦」とある三首につづいて「そのあした」とある四首中の一首。葛原は、太平洋戦争の末期、浅間山麓の沓掛に疎開していて、その地で敗戦を迎えた。しかし「敗戦が実感となるのにまだ遠し先は考へむ飲食(おんじき)のこと」とも歌われているように、信州の山麓の景色に変化は見えず、まずは今日の食料が関心事だったのであろう。その中で「竹煮ぐさ」の、むしろ不吉なばかりの「しづけき」景色を、その「しらしら白き日を翻す」酷薄な景色を目にする。その時「異変」という言葉が閃くように響いてきたのだろう。「異変」という意味は、(また敗戦を「停戦」といった意味も)明確ではない。しかし、この「異変」という一語で、一首全体が怪しくざわめいてくるのは確かだ。目に見えない「異変」が人の心を襲う時、目の前の風景も、また言葉も、尋常でない緊張と殺気を孕むということであろうか。いやそれ以上に、「竹煮ぐさ」がこの世の滅びを告知しているその「しづけさ」こそ、「異変」と感じたのであろうか。一九五〇年刊行の第一歌集。

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