クバの葉を被りて雨をやり過ごすジャングルの白い雨闇あまやみのなか

『捜してます』田村広志

 作者は一昨年(二〇〇二年)、父の遺骨捜しを中心に据えた歌集を出版した。この一首は掉尾の「沖縄にて――遺骨を捜す」という章に置かれたもの。むろん作者の遺骨捜しは一回のみのでなく、ここ数年にわたってなされており、リアルに詳細につづられたその遺骨採集体験記は、戦争というもの手触りと意味を、読者にあらためて問うものとなっている。この一首はその作業中に雨に会った場面だろう。鬱蒼と茂ったジャングルを襲った激しい雨を、「白い雨闇」と鮮やかに表現する。「クバの葉」とは沖縄での呼び名で、和名ではビロウのこと。緑濃い大きな葉だが隙間がある葉なので、これで雨がしのげるかとも思うが、その葉で雨を防いでいる姿は何か明るくて、救われる気がする。「七十五年見つからないけど遺骨なる親父は何の架橋だったか」と次の歌にある。作者は父の顔はおろか、「記憶も匂いもいっさいない」と記す。己のルーツとしての戦争を暴く歌集であろう。

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