『真珠層』梅内美華子
夏の終わりは、また多くの蟬の死を目にする季節である。地に仰向けになっている蟬に手を触れると、まだ生きていてジジと鳴いたなどという経験は誰にでもあるだろう。ここに歌われている蟬は、いのちの衰えた証拠に、作者の指をじっとつかんで動かない。蟬の脚につかまれている指のこそばゆさは、まさしく残りのいのちの感触だが、作者はそれを愛しんでいるようである。死を予感じするのは人間のみであるという。それゆえ、蟬が作者の指を「死に場所」にえらんだことに悲哀を感じているのは、作者が人間であるからだが、それにしても歌に流れている涼しげな哀しみは読者の胸にも沁みる。「人生は『あの日』を積みてゆくものかスクランブルに熱風くだる」とも歌われている。この歌集の背後には、多くの死に出会った歳月があるようだ。二〇一六年刊行の第六歌集。
