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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
吉野 裕之
今われは都市の貌(かほ)して足早に群れの流れの中に融け行く
弟のかんばせ蔽ふ白布(しろぬの)を落葉の匂ふ風が通れり
会ふ人の皆犬つれし小公園吾が曳く白狐他人(ひと)には見えず
窮屈な機内に足を組み替へるやうにゆつくり話題を変へむ
後ろより誰か来て背にやはらかき掌を置くやうな春となりゐつ
ふり向いて影たしかむる坂道にひと日のわれと俺とが出会ふ
よろこばしき泉水に来ぬわたくしの喉の奥より蟇(ひき)のこゑ ククッ
かうするつもりだつたが結局かうなつた 長き一生(ひとよ)を要約すれば
月光の柘榴は影を扉におとす重き木の扉(どあ)なればしずかに
こんなにも太つてしまひし青柿よ六月まひる出会ひがしらに
えんがはにちちははのゐておとうとゐてネガのなかねぶの花咲く
役にたつやうさまたげにならぬやう名札小さく〈ボランティア〉なり
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