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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
吉野 裕之
熟柿(うれがき)はわれを抱きし伯母のやうぽたぽたとして皮破れさう
高々と資材吊り上げ夕焼けの中にクレーンなほ動きゐる
遠い朝のように母来て縁側の夏のほとりに吸うている桃
日常のわが段落に埋めおきし球根がけさ洎夫藍に咲く
排泄の音が聞こえる静けさに肩のしこりをほぐさむとする
馬の屁のやうな匂ひの風が吹きぽつりぽつりと雨が降り来ぬ
曖昧に蓴菜(じゅんさい)すする昼の餉(け)や薄暮家族となりゆくわれら
早春の風を踏みつつ来しなだり紅梅その他君の背も見ゆ
救急車のサイレンに二つの表情あり近づく不安離(さか)る哀感
人が梯子を持ち去りしのち秋しばし壁に梯子の影のこりをり
朝覚めし母に会へれども耳とほき人として未だこゑをかはさず
寝る前のしどろの闇の弾力は押し返しくるいきほひ持てり
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