コンテンツへスキップ
砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
久我 田鶴子
米寿まで生きながらへたこのからだ母より享けて母をすまはす
放射線治療を待ちゐる父の指帽子の鍔を辿りてやまず
時の流れにさからうための筋力よ鉄棒の鉄の匂いをつけて
やせ猫の背筋のばして坐しゐしがやをら眼前をよぎりゆきたり
陽溜まりは陽の窪みにて陽のにほひ動かぬ窪みに屈みゐるなり
人類がおよそ男女に分かれける前の入江の夜静かなり
生と死のうづうづまきてをりにけむ丸縁眼鏡の志功のなかに
屋上に来ればあなたはゆっくりと気付かぬほどの距離を持ちたり
カーテンを束ねる指に蔦の影どこまで知ってよいものだろう
ウィンドーに映る女の奥行きに鳥らしきもの少し歪んで
おめでとうおめでとうって笑わないひとりの顔を目がすっと追う
ドアを閉め肩の力を抜いてからサンドバッグは眠りに落ちる
投稿ナビゲーション
前のページ
固定ページ
1
固定ページ
2
固定ページ
3
…
固定ページ
13
次のページ