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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
染野 太朗
にしんそばと思った幟はうどん・そば 失われたにしんそばを求めて
もみぢいよいよ燃えて一切まにあはぬ我のひと日を笑ふうつくし
おーい列曲がつてゐる、と言ひかけて 眼閉ぢれば春の日はさす
シラバスの重さなつかし学生が春のベンチで履修に悩む
夢見ずにねむり足りたるわれの身は檸檬をしぼるちから出だせり
したたかにその身を打ちて自販機の底に気絶の缶コーヒー取る
〈柿死ね〉と言つてデッサンの鉛筆を放り出したり娘は
何故ああであつたか 神の沈黙は押し入つてくる扉閉めても
コマーシャルのあひだに遠く遅れたるこのランナーの長きこの先
藤棚のやうに世界は暮れてゆき過去よりも今がわれには遠い
勢ひのある白雲よ一色(ひといろ)のからだすみずみまでうごくなり
不自由に生まれたかったカーテンの卵弾けて蜘蛛が溢れる
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