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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
月:
2017年5月
水薬の表面張力ゆれやまず空に電線鳴る十一月
なかぞらのすきまに見えて赤き實の三つ野鳥ののみどへ行けり
灰色の空見上げればゆらゆらと死んだ眼に似た十二月の雪
自動エレベーターのボタン押す手がふと迷ふ真実ゆきたき階などあらず
舞い上がるぺらぺらな紙このままで十三月の空に死にたし
わが脚が一本草むらに千切れてゐるなど嫌だと思ひつつ線路を歩く
あおあおと一月の空澄めるとき幻の凧なか空に浮く
すべからく落つるべき子が落ちしかな大田区池上むかしの肥溜め
約束をつんと破ってみたくなる二月の空にもりあがる月
呼ぶ声の水にひびかひ草むらにもう一人ゐて少年のこゑ
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