吉田隼人


春の岬旅のをはりの鴎どり
うきつゝとほくなりにけるかも

三好達治『測量船』(引用は青空文庫による)

 まだ歌を始めたか始めなかったかの頃、三島由紀夫晩年の『をはりの美学』という軽いエッセイ集のなかで出会った歌。いま見返すと、もう引き返せない旅路の終わりのようにも思われる。はじめての詩集の巻頭にこの歌を書き付けた三好達治と、もはや自決を心に秘めていたであろう三島が軽いエッセイにこの歌を書き付けた気持ちと、それは詩のはじまりと死のはじまりと、ふたつのはじまりであった。そして死のはじまりが終わりであるように、きっと詩のはじまりもまた、何かの終わりを意味していたのかも知れない。
きっぱりと切り離されたような下句は、岬(に立つ者)の視点から遠ざかっていくカモメたちを見ているようで、実は既に視点の主はカモメのほうに仮託されており、行き止まりに見えた岬から「うきつゝとほくな」っていくのは自分自身なのかも知れない。遠くなりにける、のはカモメたちではなく、むしろカモメたちにとっての岬であったのではないか、何かの「をはり」が、新しい旅のはじまりでもあるように。