光森裕樹


誤って世界から離脱しないようわずかな尿意を残して眠る

西改美希「With a laugh/In the rough」(『阪大短歌』5号:2016年)


(☜9月18日(月)「学生短歌会の歌 (14)」より続く)

 

学生短歌会の歌 (15)

 

寝る前にお手洗いに――というのは、誰しもが子どものころから言われていたことだろう。もはやお漏らしなどはしない年齢になっても、寝る前にはすっきりしておきたい。そうしなければ深く眠れないからだ。
 

掲出歌では、深く眠ってしまうことで「世界から離脱し」てしまうことが強く恐れられている。そうならないために、夢に唯一持ち込めるものである「尿意」を命綱にして、眠りの世界に降りてゆく。
 

それでは、こころも身体も休まらないように思えるが、多くの人が意識することのない眠ることへの不安が、一首に満ちている。
 

地球型ジャングルジムで回ることそれは脱皮に少し似ていた

 

同じ連作から引いてみた。
 

今はあまり見かけることがなくなったが、公園にくるくると回転する球状の大型遊具が置かれていることがある。遊具の回転による遠心力に飛ばされないようにしがみつくと、確かに何かが身体から抜け出ていくような気がしたものだ。「脱皮」と表現されると、なるほどと感じる。
 

地球型ジャングルジムで脱皮してゆく「皮」の方は、掲出歌における世界からの「離脱」に近いものなのかもしれない。
 

あるいは、幼いころに地球型ジャングルジムで私から剥がされてゆく「皮」の方にも、意識があったとしたらどうだろうか。そう考えると恐ろしい。
 

たまたま「皮」側ではく、ただひたすらジャングルジムにしがみ続けた私は、今夜も世界から振り落とされないように、尿意を残して眠るのだろう。
 
 

(☞次回、9月22日(金)「学生短歌会の歌 (16)」へと続く)