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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
前田 康子
花ささぬ瓶(かめ)のごとしと人のいふとも、老づきて独りゐる時のこころの安けさ
浴身のしづけさをもて真昼間の電車は河にかかりゆくなり
半開きのドアのむかうにいま一つ鎖(さ)されし扉(と)あり夫と暮らせり
開張する前翅は十三センチ越ゆるなるドクロメンガタ蛾は鼠の声す
ガス室の跡なりと いう崩れた る煉 瓦昨夜の雨にしめれり
一生を直立歩行と決められて少年がカナリヤの籠さげてゆく
刻んでる音がしてゐるやがて潰れて青いどろどろの現実が来る
吊り皮の手首に脈拍たしかむる寒の迫りてくるはさびしゑ
告知されその名のごとく病み臥して足二本分の崖に立ちゐき
両端に繭をやどした綿棒は選べずにいたわたしのようだ
待つことはある日なくなる 雀がつまめそうに散らばっている
いやべつにああさうだつけ聞いてないそれでいいじやんもう眠いから
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