染野太朗のアーカイブ

箇条書きで述ぶる心よ書き出しの一行はほそく初雪のこと

帰ったら雑穀ご飯でも食べよ新宿代々木原宿渋谷

今週会った人たちはみんないい人で土曜の夜は紅茶を飲んだ

花火した話を人にしているとときどき誰とと聞く人がいる

寒くなるほどさびしくなっていきやがるカレンダー薄っぺらな心め

もう君の望むことしか言えないよ灰皿に落ちる無数の蛍

ひと跨ぎできるつもりがやや高くいちど腰掛けてから急いだ

にしんそばと思った幟はうどん・そば 失われたにしんそばを求めて

もみぢいよいよ燃えて一切まにあはぬ我のひと日を笑ふうつくし

おーい列曲がつてゐる、と言ひかけて 眼閉ぢれば春の日はさす

シラバスの重さなつかし学生が春のベンチで履修に悩む

夢見ずにねむり足りたるわれの身は檸檬をしぼるちから出だせり

したたかにその身を打ちて自販機の底に気絶の缶コーヒー取る

〈柿死ね〉と言つてデッサンの鉛筆を放り出したり娘は

何故ああであつたか 神の沈黙は押し入つてくる扉閉めても

コマーシャルのあひだに遠く遅れたるこのランナーの長きこの先

藤棚のやうに世界は暮れてゆき過去よりも今がわれには遠い

勢ひのある白雲よ一色(ひといろ)のからだすみずみまでうごくなり

不自由に生まれたかったカーテンの卵弾けて蜘蛛が溢れる

腕時計くるひ始むるまひるまにゆるく人だかりに分け入りつ

生卵片手で割れば殻だけはこの手に残るきっともう春

人のために使ふことなしひと月を流れていきしお金を思ふ

おびただしい黒いビーズを刺繍する死よその音を半音上げよ

たてがみに触れつつ待った青空がわたしのことを思い出すのを

たてがみに触れつつ待った青空がわたしのことを思い出すのを

白き雲流れゆくなり 雲梯を這って渡ったこと一度ある

光る川 光る欄干 君は今日光ったものを忘れるだろう

チチチチと鳴いてゐるのかこの小鳥握らばきつと温かならむ

みぎの手をそらにかざしてうたふこゑ君はやつぱり晴れをとこゆゑ

僕は今幸せのはず膝に来てアリ三匹が遊んでいるし

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