染野太朗のアーカイブ

たてがみに触れつつ待った青空がわたしのことを思い出すのを

白き雲流れゆくなり 雲梯を這って渡ったこと一度ある

光る川 光る欄干 君は今日光ったものを忘れるだろう

チチチチと鳴いてゐるのかこの小鳥握らばきつと温かならむ

みぎの手をそらにかざしてうたふこゑ君はやつぱり晴れをとこゆゑ

僕は今幸せのはず膝に来てアリ三匹が遊んでいるし

足元にさっき落としたふでばことそこから散ったひとときの色

足のうらを剝がし剥がしてゆくことを歩くと呼べり生きると呼べり

たちまちに声のみとなり行く鳥のゆふやけぞらの喉ふかくゆく

ざつとまたひと雨あらん包丁に水よくなじむ夏のゆふぐれ

傘を差さなくていいほどの雨が降るという気象予報士の目を見てしまう

飛来するトンネルの穴つぎつぎに生きているまま吸いこまれたり

新しい人になりたい 空調の音が非常に落ち着いている

草臥れて立ち上がれない夜もある会社近くのドトールの隅

ドーナツに埋めようがない穴がありこんな時間に歯を磨いてる

ほぐれない雲を保ってほほえみの兆しを見せるからほほえんだ

斜めがけのカバンに入れた炭酸が尻ポケットのおさいふで弾む

首すこしのびた気がする光降る秋をむかえに公園に行く

プラスチックストロー廃止のニュースありスタバが世界を牽きゆくように

蜥蜴の尾あをくきらめくきざしくる生への意志は信じがたくも

白梅の輪郭だけを光らせて夜の微雨去れり 悪の限りを

酒とジュースのハーフはつねに酒なれど遺伝子はわれと子を分かちたり

枇杷の葉は日差しに透けず測量の人たちが集まって笑った

短足を櫂として漕ぐ水中の河馬の軽さよ尻尾も短い

わたくしを生きているのは誰だろう日々わずかずつ遅れる時計

洗濯機回る音すらうたた寝に母在りし日の音とし聞こゆ

歩数ゼロの携帯にメール、またメールわたしは今日はじつとしてます

噴水を創りし人のはるかなる水きららかに巡りてゐたり

きちんと育てられたんやねと君は言ふ私の闇に触れてゐるのに

鏡台の位置を変えれば意外なる明るき光の中に貌あり

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