光森裕樹のアーカイブ

アトラクション終わるみたいに叡電が出町柳のホームに参ります

誤って世界から離脱しないようわずかな尿意を残して眠る

救命の練習用の人形に雑にあけられている耳穴

そういえばもう長いこと空(青いやつです)色の空を見ていない

逝きかけの蟬を励ますこの夏にとくに未練はないはずなのに

獏たちが来たときに差し出す夜を祈りと思い出に分けておく

初雪が降ったみたいに顔を上げおそらく震度3のファミレス

一九八四年九月六日蒲田女子高裏窓の少女たち

きみの持つ釣りざお見ながらゆく港 寒い そうだね噓みたいだね ね

中学生のカップルねむるシアターが映し出すマイケル・J・フォックス

でもそれでいいんだとてもみぞれ降る二月のことを聞かせてほしい

年末の十億円が当たったら/当たらなくてもバイトは辞める

バス停はもう水浸し来ないなら来なくてもいいから待っている

薄暗い頃に目覚めてジャスミンの香りに喉をしめらせてゆく

うまく言えたためしがないなそのままのあなたにもわたしにも吹く風

底辺を高さと掛けて二で割ったことを私は必ず許さない

朝顔は咲かなかったし約束も守れなかった ブローチを刺す

ゆつたりと生きゆく人とゆつたりと死にゆく人が花の真下を

こわいのよ われに似る子が突然に空の奥処を指さすことも

僕たちは生きる、わらう、たべる、ねむる、へんにあかるい共同墓地で

わたあめ屋歩めばさらにわたあめ屋売る人の顔みな同じなる

吉野家の向かいの客が食べ終わりほぼ同じ客がその席に着く

急行を待つ行列のうしろでは「オランウータン食べられますか」

きっと血のように栞を垂らしてるあなたに貸したままのあの本

夏なのに咲かない向日葵 泣いていた記憶ばかりが鮮明、ずっと

太陽の沈まぬ国のひまはりは首落つるまで陽を追ふといふ

陽炎に裏表ある確信を持ちてしずかに板の間に伏す

炎昼の往還に人絶えぬればあらはるる平沼銃砲火薬店

幼年時代の記憶をたどれば野の果てで幾度も同じ葬列に会う

七月十七日かなかな鳴けり幾度か短く鳴けり夜のベランダに

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