一ノ関忠人のアーカイブ

あしひきの山の木末の寄生とりて插頭しつらくは千年寿くとぞ

年くると世はいそぎたつ今夜しものどかにもののあはれなる哉

たが宿の春のいそぎかすみ売の重荷に添へし梅の一枝

あたらしき背広など着て/旅をせむ/しかく今年も思ひ過ぎたる

南の阿波岐の浜に我在りて想ふ事なし年暮れにけり

歳深き山の/かそけさ。/人をりて、まれにもの言ふ/聲きこえつゝ

大空を草薙ぎ払ふごとく来て無人攻撃機の金属音は

吹く風に潔く散れ山さくら残れる花はとふ人もなし

烏口の穂尖に思ひひそめては磨ぐ日しづかに雪は降りけり

母の国筑紫この土我が踏むと帰るたちまち早や童なり

むさし野は ゆき行く道のはてもなし。かへれと言へど、遠く来にけり

母の言葉風が運びて来るに似て桐の葉ひとつひとつを翻す

曇るとも何かうらみん月こよひ はれを待つべき身にしあらねば

身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留めおかまし大和魂

今日にかけてかねて誓ひし我が胸の思ひを知るは野分のみかは

益荒男がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾とせ耐へて今日の初霜

たまさかに人のかたちにあらはれて二人睦びぬ涙流るる

遊びたるひとつ水雷艦長に幼きこゑをのこし、まばゆし

秋さぶる気配やや色づくと窓の森いくたびも大きたゆたひ

おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く

鳴けや鳴け蓬が杣のきりぎりす過ぎゆく秋はげにぞ悲しき

薪伐る鎌倉山の木垂る木を松と汝が言はば恋ひつつやあらむ

時によりすぐれば民の嘆きなり八大龍王雨やめたまへ

青年死して七月かがやけり軍靴の中の汝が運動靴

梓弓はるは来にけり武士の引きかへさじと出づるたびかな

かへらじとかねて思へば梓弓なき数にいる名をぞとどめむ

すすき原ほほけ初めたる山のなだり 父あゆみゆく わが歩みゆく

召さるる日あるひは近しひと夜おそく焚くべきは焚けり思ふべきは思へり

聞きわびぬはつきながつき長き夜の月のよさむにころもうつこゑ

日向の国むら立つ山のひと山に住む母恋し秋晴の日や

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