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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
澤村 斉美
雑然たる日々のすきまに見えきたる光の如く年を迎うる
人恋ふにあらねきさらぎ雪積めばさ夜更けてひかりいづるわが髪
慈姑(くわゐ)といふ字がいいなあと思ひをり慈姑のやうな青を着ようか
あかときの雪や雪てふ仮の名をもちて此岸の葦の間に降る
袈裟掛けに妻を斬りたる机竜之助の無頼たのしむ風邪の布団に
家族には告げないことも濃緑(こみどり)のあじさいの葉の固さのごとし
やはり<明日>も新鮮に来てわれわれはながい生活(たつき)の水底にゆく
一滴の青を落としてわが画布にはばたく鳥の羽を弑(しい)する
然り、然り、幸福ならむ夫と子と夕もやのごとき魚を飼う日は
林床のどんぐりの実のそれぞれに父母ありしと思う初冬
木戸あけて茗荷はどこと言いながらははがしゃがんでいるような朝
全身にゆきのにほひをまとひたるこどもがをりぬ。ほら、わたくしが。
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