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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
棚木 恒寿
胸うちに棲みつく獣起きるなと願ひつつ今日の会に出でゆく
電車から駅へとわたる一瞬にうすきひかりとして雨は降る
路上にて少年は踊るはだか馬のような背筋月にさらして
古い付箋の位置をずらしてまた戻す記憶のうらの蛇を見しごと
思い出が痛くて眠れぬ夜半の雨オキシドールのように沁むるよ
充電器に鎮座している携帯の何かに似ている そうだ位牌だ
白タイルのしみを這ひゐる秋虫とわれは圧(お)されて階のぼるなる
傘といふすこし隙ある不思議形にんげんはあと何年つかふ
あやまちて野豚(のぶた)らのむれに入りてよりいつぴきの豚にまだ追われゐる
馬追虫(うまおい)の髭(ひげ)のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて想(おも)ひみるべし
夕さればそぞろあきりす銃器屋のまへに立ちてはピストルを見る
桔梗のむらさきのいたさ病む胸をすりよせて石の墜つる音きく
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