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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
中津 昌子
髣髴(ケシキ)顕(タ)つ。速吸(ハヤスヒ)の門(ト)の波の色。年の夜をすわる畳のうへに
大言壮語美しかりし男らもなし二方より野火は放てど
手をつなぐためにたがひに半歩ほど離れたりけりけふの夫婦は
花のため切られし茎のきみどりの匂い強くて少したじろぐ
旗また旗のつづく市街のいくたびも思われて白いタオルをたたむ
鹿の肉切り裂くに顯(た)つ伏す鹿の伏せし睫毛の伏せし深翳
雪の夜はをみななるわれ温石(をんじやく)の言葉となりて夫を寝(い)ねしむ
誕生日祝ういわおうエスキャルゴオの殻から黒い身をぬきだして
木陰にてさくりと鍬をふるう祖父影をもたぬは哀しきことよ
薬臭のなかにかすかに乳の香す母をベッドへ抱きおろせば
綿飴かい うんにや、ひとだま 石垣をふはり越ゆるはほんに美味さう
老犬の日向ぼつこを眺めゐる父かな母かな仲よく老いぬ
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