中津 昌子


旗また旗のつづく市街のいくたびも思われて白いタオルをたたむ

佐伯裕子『みずうみ』(2007年)

 

 

たぶん夕ぐれ。
タオルは一枚ではなく、外からとりいれたものを続けて畳んでいた時の連想ではないか。しろっぽいものが多かったのかもしれない。「旗また旗」「いくたびも」、こういうところが、ちょっとした折りに一枚のタオルを畳んでいる場面ではなかろうと思わせる。

「旗」は日の丸であろう。

映像などでよく目にする、出征兵士を見送る光景が目に浮かぶ。

 

どこか外国のある情景が思われていないとは言い切れないが、わたしは切実感に勝る上記の解釈をとりたい。

「白いタオル」が、白地に赤の、日の丸を思わせよう。また、ここに立ち止まっていると、「旗」を懸命に降る人たちの顔までが思われてくる。遠い時代のこうした場面の、ある頂点に達した気持ちにある顔を「白」は思わせる。そしてさらにこの色は、読む者に、「たた」んでいる人の心のありようを推しはかろうとさせる。

 

せんたくものは、よく膝の上で畳む。
膝という、やわらかく、あたたかいところにのった「白いタオル」を介して、ひろがり沈んでいく心。

 

日常生活における動作が元になっていることが、一首に籠もる思いにある地に着いた感じを与え、連想を軽いものにしていない。