吉田隼人のアーカイブ

うろこは一枚一枚まぶたの重さなので今はねむりたい深海魚のとも

水に卵うむ蜉蝣よわれにまだ惡なさむための半生がある

モロヘイヤいくつあってもモロヘイヤこの夏幸せなモロヘイヤ

昼もなほつめたい床に膝をつき毒を吸ひ出すやうにくちづけ

殺してもいいけどここからここまでは親に届けてあげて泣くから

青き灯のここに黙れば訪ひてとほどほと風を聴きゐたり 丘

冷たくも祈り組まれたその御手におのが手を寄せぬくみを分かつ

羽うすき翼竜よきみは怯ゆるな老いし暴君ティラノに吠えらるるとも

こころはあおい監獄なのに来てくれた かすかな足音を積もらせて

ふいに雨 そう、運命はつまづいて、翡翠のようにかみさまはひとり

月の中にひびきのぼると思ふ迄霜よのかねに影ぞ冴行

今朝のあさの露ひやびやと秋草や總べて幽けき寂滅ほろびの光

樹のなかに馬の時間があるような紅葉するときいななくような

その羽に天ひるがへし身に享くる時間せまくはなきかつばめよ

かつ凍りかつは砕くる山川の岩間にむせぶ暁の声

露や花花や露なる秋くれば野原に咲きて風に散るらむ

暮れて行く形見に残る月にさへあらぬ光をそふる秋かな

志賀の浦梢にかよふ松風は氷に残るさざなみの声

胸びれのはつか重たき秋の日や橋の上にて逢はな おとうと

天たかく馬がこえてはならぬ一線をこえわたしもつれてって

より似合う彼女にぬくいジャケットをゆずり晩夏の使命を果たす

鳰どりは水にもぐりてみづになり浮き出でてみづは鳰どりになる

コピ・ルアクしずかに啜る春の宵きみは時折山猫の伸び

花が咲いたようだと花をあげるからと花咲かせよと微笑むばかり

鳥貴族で金麦(大)を頼まないとかリッチマンですかあ? じゃないんですよ

いままで 日本語をつかっていたのに今日からは雨と話せるようになりたい

【戦争にいかせたくない わたし自身が戦争になってもこの子だけは】

この冬のあい間あい間に春の風吹きいたり引きちぎられてゆく四季

思想誌を凶器のごとくあふれしめ書肆に兵士の裔ならびたつ

蛍火といふからには火 親指のふかづめを隠して受け取りつ

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