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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
佐藤 弓生
元日すでに薄埃あるテーブルのひかりしづかにこれからを問ふ
オリオンはさやかに高しわれ二十歳みにくけれどもおもてを伏せず
マンホールの蓋を持ち上げ残雪を捨てて世界はまた春になる
角砂糖角[かど]ほろほろに悲しき日窓硝子唾[つ]もて濡らせしはいつ
よろこびが引いていくとき湖面から静かに現れる人力車
眠る間にすべてを忘れますように 百合の香りがしている廊下
あかときに目覚めし人は隣りゐる老女の貌を見るにあらずや
欄干[らんかん]に雪のふちどりこの夜はなんという劇の幕間[まくあい]であろう
鈍いひかりの空から音もなく落ちる……トナカイ その後 橇 マスタング
はしがきもあとがきも無き一冊を統[す]べて表紙の文字の銀箔
石の肌は(かつて内部であつたこと)舗道に冬のひかりをかへす
脱ぎてある君のYシャツ腕まくりしたままなれば解きてやりぬ
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