中津 昌子


雪の夜はをみななるわれ温石(をんじやく)の言葉となりて夫を寝(い)ねしむ

田宮朋子『星の供花』(2004年)

 

 

「温石」ってなんだろう。
なんともいいことばで、音もいい。
『広辞苑』をひいてみると、「焼いた軽石を布などに包んで身体を温めるもの。また塩を固めて焼いたもの、瓦などに塩をまぶして焼いたものを用いる」とある。
読んでいると、芯からあたたまりそうで、そしてやわらかい熱をいつまでも保っていそう、と思う。

 

雪の夜というのは、それこそ雪が降る夜ならではのしずけさがあって、家の中や布団の中にいると、ことさらに“籠もる”という感じがする。
二人きりでそのように籠もって、妻は夫に寄り添っている。

 

おやっと思ったのは、「われ」が「温石」そのものではなく、「温石の言葉とな」っていること。
「夫」はかたわらに語られることばを聞きつつ眠りに入っていく。幼子のようなやすらかさだ。人としてこれ以上のやすらかさがあろうか。

 

「温石」そのものにならないところに、この歌のよみどころがあるのだろう。
思えばさきほどわたしは、『広辞苑」の説明にぬくぬくとした。もしかしたら、実物以上のぬくみを受け取ったかもしれない。ことばの力には限りがない。

 

しんとした雰囲気のなかに、女というもの、ことばというものの果てのない大きさが沈んで感じられる。