十楽の賢しく白き花咲きて江戸町裏の女ありしか

石川恭子『雲も旅人』(2014年)

    ※「十楽」に「どくだみ」、「賢」に「さか」、「女」に「をみな」とルビ。

 里山の植物で、都市化が進んでも比較的身近なところに生き残っている植物の筆頭は、ドクダミだろう。くっきりとした十文字の剣のような白い花が咲く。匂いも独特である。考えてみれば、雑草扱いして引き抜いた覚えが、私にはあまりない。

今これを書いていたら、大阪都構想の住民投票の結果を知らせるニュースが聞こえて来た。

江戸町裏の女がドクダミなら、大阪の町裏の女は何の花だろうか。どうも白い色ではなさそうだ。何しろ文楽の本場である。私は若い頃はあまりぴんと来なかったのだが、ある時NHKテレビの文楽の番組を見ていて、にわかに感動にむせんでしまったのだった。さて、秋葉原のように世界に知られた場所は、大阪ではどこなのだろうか。いろいろあるような気がするが、地域の事情に詳しくない者には、典型的な固有名詞がすぐに出て来ない。私は大阪の問題はそこにあるような気がしている。

 

編集部より:石川恭子歌集『雲も旅人』はこちら↓

http://www.sunagoya.com/shop/products/detail.php?product_id=884