松村 由利子


誓ったり祈ったりしたことはない 目を離したら消えていた鳥

        土岐友浩『Bootleg』(2015年)

 

作者は1982年生まれである。この世代は、上の世代よりも少し体温が低いような印象を抱いている。何かを熱く支持したり信奉したり、ということをしない。

幼いころにバブル景気を経験した後、その崩壊が到来。青春期は「失われた二十年」と重なる――そうした経験は恐らく、この世代に何らかの諦観、厭世感を与えたはずだ。そして、若いときにニュースで見聞きした世界各地の紛争やテロは、宗教というものに限らず、何かを信じることの危うさを植えつけたのではないだろうか。上の句に、そんなことを思う。

しかし、本当のところ、最初に読んだときには恋の歌かな、と思った。儀式ばって永遠の愛を誓うことなどせず、ふと目を離した隙に大切に思っていた「鳥」が飛び去っていたとしても、自分はその存在に固執することはない…… 。そんなふうにも読めるのが、この歌の魅力かもしれない。

歌集では東直子が「不在の中の存在感」というタイトルで解説を書いている。結句の「消えていた鳥」には確かな存在感がある。作者がどれほど大切に思っていたか、いなくなってしまってどれほど悲しみを抱いているか。

「誓ったり祈ったり」しないのは、すべてを自ら担う苦しいことである。