松村 由利子


元気よくおりこうさんの返事するニュースの子ども 子どもは窮屈

細溝洋子『コントラバス』(2008 年)

 ニュースを見ていると、各地の催しに参加した子どもや、両親と地方都市へ帰省した子どもに、記者が「面白かった?」「楽しかった?」などと誘導尋問的に質問する場面がある。「まあまあ」とか「あんまり」などと言ってもかまわないのに、たいていの子どもは「うん!」とうなずくか、「面白かった!」とオウム返しに返事する。みな「おりこうさん」なのである。

この歌の作者は、子どもの本質をよく知る人なのだと思う。子どもは大人の求めているものを本当によく知っている。もちろん、それを与えることで自分がかわいがってもらえるから、子どもは大人の期待に応えようと一心になるのだが、その心性のいじらしさといったらない。

幼い子どもは非常に公平に、両方の親に対して愛情を注ぐ。その公正であろうとする姿勢は、親が離婚した場合、特に強く貫かれるように思う。年月がたち、片方の親からもう一方の親を批判する言葉を多く聞かされた結果、育ててくれた親への愛情が優ることはあっても、基本的に子どもは「おりこうさん」である。また、親から虐待されている子どもが、自分の状況を第三者に隠し、親をかばおうとする姿には神々しいものさえ感じる。

作者は、そういう子どもの本質を思い、「ニュースの子ども」に「窮屈」なものを見てしまったのではないかと読んだ。

 

そんなにいい子でなくていいからそのままでいいからおまへのままがいいから  (小島ゆかり)

 

小島ゆかりの一首は、自分の子どもへ呼びかけた愛情あふれる名歌だが、「ニュースの子ども」の向こうにすべての子どもを見ている、この一首の愛情も深い。「おりこうさんでなくて、いいんだよ。あなたの思っていることをそのまま言ってごらん」--さりげない表現のなかに、豊かな人生経験と温かい人柄が滲む。