光森裕樹


舞い上がるぺらぺらな紙このままで十三月の空に死にたし

吉田千枝子『十三月の空』(ながらみ書房:2005年)


(☜5月12日(金)「月と空 (1月)」より続く)

 

◆ 月と空 (13月)

 

非常に抽象的な歌で、どこまで具体化して読めばいいのか迷う。書類なのか、あるいは紙吹雪のような小さな紙片なのか、眼前を薄い紙が舞い上がる。その様子を眺めつつ、自らの在り方を重ねたのか、ふと死を希求する。
 

「十三月の空」という表現が面白い。当然ながら一年は十二ヶ月しかなく、十二月の次は一月となる。しかし「十三月」という言葉には、本来、時というものが一方向に流れるものであり、ぐるりと巡る暦のような考え方のほうが不自然であることを思わせる。
 

やはり、歌が読まれた季節は年末である十二月と考えるのが自然であろう。舞い上がる紙を見つながら、次のあらたな一年を望むのではなく、自然な時間の流れに身を任せたい、という思いがあるのか。人間にとっての時間の理から、歴史という大きな時間の流れに接続していくような印象がある。
 

掲出歌は「十三月の空」という連作の冒頭歌にあたる。以降の歌において、死を希求する理由は語られない。むしろ、ローマ時代などの悠久の時代を鳥瞰するように辿っていく。
 

三千年は短かりしかぽーっぽーっと光の後になにが続くか
ほの青き繭の丸さにローマ見ゆ巨大な鳥の落とした卵

 

十二月の向こうに十三月を見るのであれば、一月の前にも無限に遡っていく時間を見ているのであろう。
 

花を摘むカエサルの広き背の向こう点々と水連なりて 零

 
 

(☞次回、5月17日(水)「月と空 (12月)」へと続く)