沖縄は地球(テラ)に抱かるる守宮かもまるくゆらりと目(まみ)をめぐらす

名嘉真恵美子『海の天蛇』(短歌研究社:1998年)


 

「みちのくへ」と題された沖縄から東北を目指す旅の一連の一首。
 

細長く伸びた沖縄本島のかたちをヤモリに見立てる点がダイナミックで面白い。地球という大きなスケールが、ヤモリの張り付く建物のようにぎゅっと小さく身近に感じられる。
 

「ヤモリ」を「守宮」と漢字で表記することによって、その字面の通り自らが棲む建物を守る小さくともたしかな存在であることを漢字させる。沖縄の歴史や現在の状況を一首は語ることはないが、地球全体・世界全体に対して何かできることがあるのではないか、という思いも込められていよう。めぐらす「(まみ)」に、地球はどのように映るのだろうか。
 

地球がヤモリを守るように抱き、ヤモリが守宮として地球を守る。大きさの大小はあれど、相互に守り合う構図が浮かんでくる。
 

沖縄を語ると、どうしても本土との対峙関係になりやすい。本土、あるいは日本という概念を飛び越して、沖縄を一気に地球全体と結びつけるものの見方は柔軟である。
 

日本の(はな)にあらずしてみんなみのま中とし見よわが島沖縄  「ニライ指す舳」

 

掲出歌を通底する意識が感じられる一首を、他の連作から引いた。
 

沖縄を「南国」や「南の島」と呼ぶとき、その意図は別としても、「南」ではない〈中心〉としての本土が意識にある。〈中心〉からはずれた「南」ではなく、「南」を中心として考えたい――という発送の転換がすがすがしい。
 

現在では、沖縄と他の土地をつなぐ移動手段は、船ではなくもっぱら飛行機となるだろう。島から高い上空へ、上空から島へという縦方向の移動が、沖縄で暮らす人々や沖縄を訪れる人々に、その島の形をつよく意識させるのかもしれない。