吉田 隼人


何といふ死のまぶしさよ道の辺の馬酔木の花は陽にけぶりゐて

谷川健一『谷川健一全歌集』(春風社:2007年)

 釈迢空の本歌取りだろう。民俗学者でもあった作者に似つかわしい。

死体が転がっているのだろうか。馬の? それともヒトの? あるいはアシビの花が踏みしだかれて散っているだけなのかも知れない。いずれにせよ、そこに「死」はある。まばゆいばかりの陽に照らされて。「けぶりゐて」というぐらいだから、視界がかすむような明るさなのだろう。

まぶしいのはきっと陽がさしているからだけではない。死そのものがまぶしいのだ。けぶり、すなわち煙と、陽すなわち火はきっと縁語。命は火のように燃えて、けぶる。命がもっともまばゆく燃えるのはあるいは、踏みしだかれてもっとも色あたらしくする花のように、死のそのときなのかも知れない。