永井祐『日本の中でたのしく暮らす』(BookPark:2012年)
この歌を初めて見たのは早稲田短歌会の詠草に参考作品として引かれていたときだった。この歌がいたく好きな先輩がいて、いまは歌のわかれをして地方の大学教員になっているが、最初こちらがこれを一首の歌だと認識できずにいたのをからかって、こういう気持ちになることもあるんだと教えてくれた。そう言われるまで、その日司会だったその先輩が(パーマはかけていなかったが)やりどころのない気持ちを詠草の片隅に書き付けたのだとばかり思っていた。
なるほど区切って読むと一首の短歌になっている。全角アラビア数字の「1円」まで含め、やけっぱちのような、それでいて楽しくふざけているような感じがおかしくて、それからはこの歌を見るたびに吹き出しそうになる。「みたいのもありますよ」だから本当にパーマをかけているのかどうかもわからない。そして何の前触れもなく結句に置かれる「1円」が言いようもなくおかしい。上記の歌会のあとしばらく、その先輩が何の脈絡もなく発言のあとに「1円」と付け足すというのをやっていたような記憶がある。こういうふうに生活のなかで楽しむという歌の受容のしかたもあるのだ。