久我 田鶴子


この星の重力美しく青々と梅の葉かげに球体実る

清水 あかね 『白線のカモメ』 ながらみ書房 2020年

                         ※「美」に「は」のルビ

 

梅の葉かげに、青い梅が実っている。小さいながらも、そのひとつひとつの球体に地球の重力が及んでいること。ちょうどいいバランスの重力が地球にあるからこそ、今ここに実っている梅の実である。地球の重力の賜物。それを「この星の重力しく」と表現してみせた作者。

地球の重力を美しいと感じる感性は、どこから来ているのだろう。

青い地球の球体と青梅の球体とが、サイズを超えて響き合っているのも楽しい。

 

逢いたくて逢いたくなかったひとと逢う火星が地球に近づいた夏

対幻想という言葉おもえりこの夜も星は涼しく軌道をめぐる

大いなる銀河の腕よりこぼれ落ち花びらほろりわれに降りくる

 

宇宙のどこからかやって来た人ではないかと思うくらい、作者のスケールは宇宙的だ。そこに、この地上での、ままならぬものが重ねられる。

「逢いたくて逢いたくなかったひとと逢う」は、複雑にして火傷しそうな熱を孕んでいる。

「対幻想」ということを言ったのは吉本隆明だが、ここで思っているのは、「対幻想という言葉」。そこから想像される、自らに及ぶ具体には敢えて触れない。言葉を思うだけであれば、「この夜も星は涼しく軌道をめぐる」のである。生々しい人間界の現実とは切れたところで、涼しくめぐる星。それを思うことは、時に救いであるのかもしれない。

花びらが降ってくるのを、「大いなる銀河の腕よりこぼれ落ち」て、という。「銀河系オリオンアーム太陽系地球の朝に桜ほころぶ」という歌もあり、銀河系に渦巻く腕(スパイラル・アーム)の外側にある太陽系の地球ということが作者の頭にはあるらしい。地球上の事象が、そのまま宇宙につながり、そのなかに自分もまた存在していることを日常的に思い描く。人間の思考能力が広げてみせる翼、計り知れない。