永井 祐


夜に降った雨が上がっている朝にバス停の屋根をはみ出して並ぶ

鈴木ちはね『予言』

 

雨上がりの朝にバス停に並ぶ。
昨日の夜に降った雨のあとが残っている。
夜のうちの雨の記憶も残っている。
面白いのは、「はみ出して」というところ。
わざわざはみ出したわけではないと思う。列が出来ていたりしたのだろう。
それで屋根からはみ出て並んでいる。
なぜ「はみ出して」を言うのか・・

雨が降っていたのは昨日の夜で、朝の今は雨は降っていない。
だから屋根からはみ出していても雨に濡れるわけではない。そこでこの「はみ出して」が変な次元に入ったようになる。
昨日の雨の痕跡は残っている。ここにも意味はあるような。昨日の夜には、この場所には雨が落ちてきていた・・

昨日の雨のことを言わなかったら、この「はみ出して」に特に違和感はない。
雨のことを言うから、「はみ出して並ぶ」が微妙な具合になって。変なところをくすぐられる感じする。
わたしはすごくぐっとくるセンスです。

歌の形を見ると、口語の歌としてとてもきれいに出来ているように見えます。
助詞の省略がないことに気がつく。
「夜に降った」「バス停の屋根を」とくっきり助詞を言うことで音数的には一音ずつはみ出すけれど、それが自然な音の揺れとして感じられる。
助詞だけ抜き出してみると、
「~に~が~に~の~を~て~」となっていて、対置される「夜に」と「朝に」だけ助詞がかぶる形になり、ほかはかぶりなしのきれいな文の流れになっている。語彙的には美的な雰囲気はないけれど、歌の造形として見てよい形をしているように思える。

そして何食わぬ顔でひゅっと投げられる変な球のように「バス停の屋根をはみ出して並ぶ」が決まっている。

こうして歌の全体を見てみると、やっていることとしてはとてもおしゃれな歌のように思えます。

最後に同じ連作からもう一首。

 

街灯で商店街とわかる道を歩いたのは初めてじゃなかった