僕たちのドレッシングは決まってた窓の向こうに夏の陸橋

穂村弘『水中翼船炎上中』

 

 

行きつけのお店があって、
いつも同じドレッシングを選ぶ。
それがお気に入りのやつだった。
きらきら光るサラダ、季節は夏、窓からは陸橋が見える。
そんな感じの歌かと思います。
やっぱりデートとかなんですかね。いつものパターンが決まってて、
二人で同じドレッシングが好きである。
いつも同じところに行くカップル。
いつも違うところに行くカップル。
数パターンをローテーションするカップル。
いろいろいる。

「ドレッシング」はいろいろ喚起する気がします。
オリジナルのがあったり、手作りドレッシング数種類から選べるお店を想像する。
個人経営のそんなに大きくないところか・・、少なくともファミレスっぽい雰囲気はない。
けっこうベタに赤いチェックのテーブルクロスとかかかってる。
言わないけど縁語的にサラダの色合いも浮かんでくる。

「決まってた」はい抜き言葉で、「僕たちの~」から続くと特に甘い感じの、成熟していないトーン。
そして「夏の陸橋」。「陸橋」は陸にかかる橋。道路とか線路の上にかかっている橋。
この歌、けっこう甘い感じの歌だと思うんですけど、ここのところがワンポイントしまるというか、印象に残るところでした。
この「陸橋」はなんでいいんだろうか。窓の向こうに夏雲とか海とかだと、歌が流れてしまう気がします。
僕からすると、「陸橋」はそれらに比べてちょっと退屈なものというか、橋だから見れるけど、いつも見慣れた陸橋なのかなっていう気がします。でもそれが「夏の陸橋」としてそこから見えたのが、記憶の中で輝いている。

細かいとこで言うとあと、「窓の向こうに」の「に」が何か気になる。
色んな選択肢があるかも。「向こうの」でも「向こうは」でもいけそうです。
全体が過去のことになっているかと思いますが、ここが「に」であるあたりに独特の語りのポジションがあるような。

 

いつも同じことしててそれで楽しいっていいですよね。それにしても。そういう雰囲気に惹かれます。

 

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