左沢森「目から星」
第三回笹井宏之賞候補作から。
好きな歌です。
かっこいいですよね。やり方が。
ありものの「コマ」のことを言うだけ、あの手を一言「短い」というだけでこう、
ぐっと立ち上がってくる。
チャーリーブラウンは、漫画『ピーナッツ』に出てくる男の子。スヌーピーの飼い主です。
わたしは漫画をあまり読んでないのでくわしくはわかりません。すみません。
が、スヌーピーシリーズのあの子として、キャラクターとしては名前とともに親しみがある。
あれはもともと漫画である。だからして「コマ」が出てくる。
この歌は初句「雪が降る」の後に一字空いている。
短歌のリズムだと、初句の後は長めの休止がある。
だから「雪が降る・・のを喜んでいるコマの」という調子になるかと思います。
雪が降る、と言われて雪が降るところを思い描くとそれは、二句以下でくるっとひっくり返るように漫画のコマの中の出来事であることがわかる。
この初句から続く二句三句としては反則のような、短歌のリズムと形式を逆手に取るようなアプローチで、とても上手くいっているように思います。
メタ的なアプローチなのでいろいろ考えられる。初句だけが実体で、二句以下はこの初句からの無数の分岐のうちの一つ、みたいにも見える気がします。
チャーリーブラウンは手は実際に本当に短く描かれている。
この歌の言うようなコマを頭に思い描ける。「喜んでいる」とするのもいい気がします。
最後に「短い手」がくると、詩的なものが立ち上がる感じがします。
特別に付け加えることのないまま漫画のことを言っているけれど、寄りかかる感じはしない。この歌ならではの詩的なものを見つける・作り出す視線がシャープに提示されている感じがします。
窓に映ったほうの自分が持っているミスタードーナツの長い箱
同じ連作からで、こちらは「長い」箱。ミスタードーナツのあの箱。電車の中とかですかね。これも「長い」の一語ですごく立ち上がる感じがします。