枝掴む足と瓦にひらく足スズメが感じている足の裏

冬道麻子『梅花藻』(ながらみ書房、2021年)

 

いっとき土踏まず(足裏のくぼみ)を育てんとはげんだことがあったが、たちまちもとの平らな足にもどってしまった。人間の足は、ふだんの生活においては、平らでこまるところがない。ときおり足裏をなでながら、あのくぼみをなつかしくおもう。

 

今日のうたは、「スズメ」の足である。枝をつかむときにぎゅっととじる足、また(屋根の)瓦におりたちてひらく足。スズメの「足」のふたつのかたちである。枝から枝へうつるときの足はどんなだろうか。スズメの足に注目し、さらにその、ときによってかわるかたちを取り出したところに惹かれる。

 

「スズメが感じている足の裏」にいたっては、そういうさまざまな足のかたち、その場面ごとに、足の裏は(足の裏を)どう感じているか、というとこまで踏み込み、おもいを寄せたところに凄みがある。立って、力をこめて何かを掴む、滑り落ちないように踏ん張る、倒れないように姿勢をたもつ、歩く、そういうときどきの足の裏の〈感じ〉というのは、じっさいに体を動かすことでしか得られないとも言える。その〈感じ〉をなつかしくおもうのだ。あるいはもどかしく、またもどらないものとして。

 

むろん人間とスズメではその〈感じ〉はいくらも違うだろう。だからここでは、自己の投影というよりも、その差異を見つめ、スズメへ心を寄せるわたしの姿をまずはおもった。でもやっぱりそこには、わたし自身のからだへの眼差しがあり、スズメを経由しながら、わたしのからだの輪郭が濃くうかびあがっている。そして「遠いなあ」とおもう。

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