同僚が四年に一度の寝不足でオウンゴールのようなミスする

俵万智『未来のサイズ』(角川文化振興財団、2020年)

 

「四年に一度」「オウンゴール」であるから、サッカーのワールドカップだろう。前回大会、2018年のうたである。当然時差があるので、変な時間にねむい目こすって見ることになる。ふだんはないことで、それを「四年に一度の寝不足」とおもいきってつづめた表現でもって言ってたのしみがある。こう言われると、なんだか珍妙、貴重なものにもおもわれてくる。

 

たとえばドラマを見だしてとまらず明け方まで見通してしまった、というタイプの寝不足もある。(あるいは千鳥の「相席食堂」でもいい。)おなじ寝不足にはちがいないし、ある興奮をともなうところも似通っているが、それでも「四年に一度」とスッパリ言ってしまえる寝不足ではない。そこが、このうたの固有のところである。

 

うたはさらに、その同僚が、寝不足のためだろう、「オウンゴールのようなミスする」とつづく。ひとつ作品世界にもうひとつふたつ入り込んで臨場感がある。「オウンゴール」であるから、まさかそんな、いくらなんでも、というようなタイプのミスである。いよいよたのしくなってくる。

 

「四年に一度」掛ける「オウンゴール」であるから、こんなことめったにないのである。その「めったにない」を、それさえもこの四年に一度のお祭りのような期間のひとつ風景としておもしろがり、味わうようである。ふだんサッカー見ないような人まで巻き込んでしまうあの雰囲気が、こうして一首のなかにも及んでいる。

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