LED電球を子は「よろこび」と名付けて消して付け消して呼ぶ

中島裕介『polylyricism』短歌研究社,2022.11

 

街なかに煌めくイルミネーションを眺めながら、ふと、この歌を思い出していました。

煌めきと昏さにこころの動かされる、ほのかにあたたかい一首。

 

「LED電球」は、低消費電力で長寿命という特長をもつけれど、

おそらくこの「子」は、そのことをつゆしらず。

そして「よろこび」という素敵な名をひかりそのものに与えて、

作中の主体の前で点滅させながら、おそらくは「子」自身が「よろこび」のただなかにいる。

 

この歌に愉快な調子を与えているのは、下の句のリフレイン。

「名付けて消して付け消して」の「付け」と「消して」のくりかえしによって、

軽快な動作のようすと、ひかりと闇が行ったり来たりして、

目の前がちかちかとするような、それでいて穏やかな気持ちをくれる不思議な余韻。

 

よく見るとこの一首には動詞が多く、そのなかで「よろこび」がきちんと名としてのかたちを整えていることで、

このことばのもつ意味そのものに新鮮な感覚を抱きます。

それは、この歌のもつ「幼い子が電球に生き物としての名を(、それも、すごくすてきな名を)与える」という驚きと呼応して、

「よろこび」を呼ぶ「子」の声がこちらにまで響いてくるよう。

 

この「子」はきっと、この歌のなかで半永久的に灯る真っ白なひかりを、わたしたちにも指し示しているのでしょう。

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