左沢森「ききかえす」『matotte.』,2022.07
大胆な句跨りの用いられた一首。句切れ通りにすると、
土星が水に/浮く 火曜日が/休みの週
と、まさに二句目の「火曜日」が「浮く」。
下の句「でもユニクロだよって笑われた」も、
でもユニクロだ/よって笑われた
と、本来の七五調で乗るべき音韻ではないことをそっと把握します。
自然と読み上げるには、一字空けや促音をうまく活用して、
土星が水に浮く/火曜日が休みの週/でもユニクロだよって/笑われた
と、9音・11音・10音・5音で句切ることで、やっと、この歌の本来の波に乗れるよう。
内容に目を向けると、「土星が水に浮く」こと、「火曜日が休みの週」のあることは、どちらもちょっと愉快な心持ちの与えられる事象。
「でもユニクロだよって笑われた」は、きっとすてきな服を纏っている(ようにうつる)対話者にたいして、作中の主体が投げかけた好意的な発言へのレスポンスでしょうか、
そう見えるの?でもこれはファストファッションなんだよ、と、照れやよろこびの混じった声色のよみがえる一瞬を想像します。
交わした会話をぽつぽつと思い出しているような語り口は、うまく波に乗れた瞬間のような心地よさ、快さをわたしたちに差し出してくれます。
さらに、この歌の中には「土星」、「水」、「火曜日」、「休み」と、曜日を意識した日常のなかに〈私〉がいることを予感させる。
その〈発見〉そのものにわたしたち読み手はいっとき、ひかる何かをこころのうちに見つけるでしょう。
ほのかな〈発見〉の輝く一瞬、についてを詠った一首ととりました。